リテラチャー・サークル研究会

Literature Circles Research Center

愛媛大学教育学部英語教育講座 立松研究室

  • 中学2年生:ジグソー学習(Illustrator)

リテラチャー・サークル(LC)を実践している先生方からのメッセージです。なぜLCに取り組むのか、生徒にどのような力を身に付けさせたいのかなど、先生方の熱い思いが詰まっています。

河野圭美 先生

1.なぜLCをするのか

リテラチャー・サークル(LC)に出会うまで、私は、どうすれば生徒が生き生きと教科書本文を学ぶことができるのかと悩んでいました。
いきなりですが、こちらがリテラチャー・サークルを行った卒業生の感想です。

  • 入試で長文がスラスラ読めるようになっていた。
  • 日本語ではなかなか話せないことも,英語ではどんどん話せるようになった。
  • 4技能のアップにつながりました。 ○文法の力も身に付いた。
  • 入試前,リテラチャー・サークルばかりの授業だったけど,(模擬テスト)英語の点数が22点から入試では47点(50点満点)に上がった。
  • 習ったことを使いこなすことの大切さを知った。
  • コミュニケーションは積極的に聞き取ろうとしたり,話そうとしたりする気持ちが大切だと分かった。
  • リテラチャー・サークルをするために学校に行っていました!

LCによって生徒も変わり、授業に対する私自身の考え方や教え方も変わりました。恥ずかしながら以前は、「今日は3人称単数形を教えて…」とか「Lesson 5Aを教えよう」ということで授業をしていました。その中で、面白そうな活動を取り入れていました。でもこれでは、生徒に本当の英語力は身に付きません。「どのような生徒を育成したいのか考え、そのための単元構想や1時間の授業デザイン練ることがいかに大切か」ということに気付きました。そうすることで、生徒に力を付け、良い授業ができると思っています。

2.LCを始めるまでに身に付けさせたい力

以下の「力」を日々の授業で継続的に培っていくことが必要だと思います。

  1. 関心のある事柄や日常的な話題について、即興で伝え合う力(やり取り)。
  2. 関心のある事柄や日常的な話題について、事実や自分の考え、気持ちなどをまとめ、話したり書いたりする力。
  3. まとまりのある文を読んで要点をまとめる力。
  4. まとまりのある文を読んで、英語で「問い」を作る力。

上記の力を身に付けさせるために、以下の活動を行っています。

授業の帯活動

  1. 話型を用いて、ペアやグループでのQ&Aやチャットなどの活動を継続的に行う。

本文の学習

  1. 生徒に英語で問いを作らせる。
  2. リテリングや要約の活動を行わせる。

単元のまとめ

  1. パフォーマンステストを行い、ルーブリック評価によって生徒の学力の到達度を測る。
  2. フリーレスポンス(教科書の内容について自分の考えや気持ちを話したり書いたりする)を行わせる。

LCはすぐにできる活動ではないので、日々の授業で少しずつ生徒のコミュニケーション能力を鍛えてゆくことが大切だと思います。

3.目指す生徒像

LCを目指して日々の授業を行ってゆくことで、コミュニケーション能力の高い生徒を育成したいと思います。コミュニケーション能力とは、自分の言いたいことや伝えたいことを持ち、相手の気持ちを考えながら堂々と伝えていこうとする姿勢だと考えています英語でたくさんの人と話して、さまざまな考え方に触れ、多様性を理解できる生徒を育ててゆきたいと思います。

 

松永麻由 先生

リテラチャーサークルで自分が変わる。生徒が変わる。

リテラチャーサークルに出会うまでの私と、出会ってからの私は、全然違うと思います。リテラチャーサークルを知らない時の私は、毎日ワークシートを作り、教科書の教材と悪戦苦闘していました。これをどうやって教えようか、教材に込められたメッセージって何だろう?生徒に何を伝えたらいいのだろう?と、いつも悩んでいました。教材研究に長い時間をかけて、それでも思うような授業ができず、という状況でした。

そんなある日、リテラチャーサークルに出会いました。最初話を聞いたときは、中学生には難しそうだから、無理かな?と考えました。でも、これが中学生にできたら、最高に面白いな、とも思いました。なので、まずはやってみる。やってみてから、無理か無理じゃないか決めたらいい、という気持ちで始めました。

リテラチャーサークルをやってみて一番驚いたのは、生徒の、生き生きと教材に向き合う姿です。生徒たちは、リテラチャーサークルをするために、教科書を何度も何度も読みます。リテラチャーサークルの役割を果たすことで、教科書に込められたメッセージや、教材を通して考えるべきことを自然に読み取っています。教科書に込められたメッセージは、教師が教え込まなくても、生徒がリテラチャーサークルを通して考え、感じ取っていくことができるのだと驚き、これまでの自分の取組を反省しました。生徒たちの楽しそうな表情や、意見が言えて喜ぶ表情、また、真剣に悩んだり悔しがったりしている様子を見ていると、生徒たちの底知れぬパワーを感じます。

また、生徒たちの英語力も伸びたように感じます。生徒の感想にも、英語力が伸びた、とか、長文を読むのが速くなったように感じる、などのうれしいコメントがありました。実際に、一年間リテラチャーサークルを続けた学年の英語テストの平均点が、同じ地区の同学年の平均点よりも大幅に上回るという結果も出ました。検証をしたわけではありませんが、リテラチャーサークルのおかげだと考えています。

リテラチャーサークルが、英語教育の世界に広がっていけばいいな、と思います。

 

向井俊博 先生

生徒が生き生きと英語を学んでいます

リテラチャー・サークルは本当にすばらしい英語の言語活動だと思います。リテラチャー・サークルを行ってよかったと思うことを3つ述べます。

1つは、生徒がいきいきと英語学習に取り組むことです。生徒が教科書の内容や物語・説明文などの読み物の単元において、自分の考えを述べたり、相手の考えを聞いたり、さらにその内容について質問をしたりと生徒が明るく元気に英語を使っている姿を見ることができます。私は今まで教科書の内容の授業では、「オーラルイントロダクション→内容理解のワークシート(T or F, 5W1Hなど)→音読」といった教師主導のスタイルでした。質問を生徒がしたり、答えたり、生徒が内容のイラストを描いて説明したりするなど、生徒主導のスタイルになることで、「生徒が主体的に英語学習に取り組むってこういうことなんだ。」と思いました。

 2つは、生徒同士の仲が深まることです。リテラチャー・サークルを行っている際は男子2人、女子2人の1グループを作ります。同じ役割の生徒同士が集まって話をする場面もあります。協働学習を通して、英語を教え合ったり、英語で話し合ったりすることで、生徒同士の関わりが増えます。生徒は「○○さんは、こんなことを考えていたのか」「○○さんにはこんな過去があったのか」など日本語では話さないけど英語だからこそ話せる内容があることで、生徒同士の相互理解に繋がっているように感じます。また、準備をしないと他の生徒に迷惑がかかるので、宿題を忘れがちな生徒でさえ宿題をしてくるといった、程よい緊張感をもって、楽しく学習しているように感じます。

 3つは、私の教材研究が生徒を中心に置くように変わってきたことです。リテラチャー・サークルを行うと、「楽しい」と生徒は思うかもしれませんが、継続することで「学びがあった」と感じるようになります。「学びのある」リテラチャー・サークルにするためには、2つのポイントがあるように思います。1つめのポイントは、ミニレッスンを通して、生徒の良かったところを褒めたり、改善点を指摘したりすることです。生徒が物語の鍵となることを指摘していたり、すばらしい体験を英語で述べていたり、習った文法事項を適切に使えていたりと、教師の視点からいろいろと学びのポイントを生徒に伝えます。そのためには、事前に生徒の音声を聴かなければなりません。15分×8グループ分を私は事前に聴きますが、大変です。ですが、それに見合うだけの学びを、生徒に与えることができると思います。2つめのポイントは、物語の何を生徒に感じ取らせたいか、それを英語で生徒に言わせるにはどのような支援をしていけばよいかを考えるようになったことです。私自身も物語を文法を教える教材としてだけでなく、主人公はどういう意図でこの行動をしたのだろうと考えるようになりました。ある生徒は「リテラチャー・サークルをしていると、まるで道徳のようですね」と言いました。教師の頭の中も、「生徒がこう考え、こう言うだろうから、この単語や文法を示しておく必要があるな」「この考えが出なかったときに、このような発問を生徒にするといいな」と考えるようになりました。教材研究を行うときに、さまざまな生徒の顔が浮かんでくるようになりました。今までの教師主導の「これを教えたいからこの順番でこう話そう」から「生徒がこう話せることがゴールだから、この順番で生徒に気づかせていこう」というスタイルになりました。

 最後に、中学2・3年生で2年間リテラチャー・サークルを行った生徒が3年生の3月に述べた感想を伝えます。

○ ただ英語で読み書き、話すのではなく、「自分の言葉」で表現する力が身に付いた。また、今まで知ることのなかったクラスメイトの考えや経験に触れることができたのも良かった。リテラチャー・サークルだからこそ、日頃聞けないような一歩踏み込んだ内容も話せたのだと思う。

○ 一番良かったことは、英語で会話することに対する恐怖などがなくなったことです。それにより、英検でいつも二次試験で何回も不合格だったのが、二級では一発で合格することができました。また、話すことで相手のことをより知ることができて良いと思いました。

○ 英語を勉強をしても実践の機会が少なかった時と比べて、この2年間は格段に学ぶ意味を得ました。また、話す相手が暮らすの仲間たちだったので、楽しく活動できました。

○ 英語で話す楽しさをリテラチャー・サークルを通して知れたこと。自ら発言するのが嫌いだったが、班の人が促してくれたことで、自分の伝えたいことを話せるようになったこと。

○ 2年間を通して僕は、英語で話す能力が1番身に付いたと思います。サマライザーやクエスチョナーなど様々な役割を行うことで、様々な観点や視野を持って英語と向き合うことができた

○ 将来に生かせる力が身に付きました。これからの社会で他人と協力しながら様々な問題を解決していくためには、対話力がとても重要になると思いますが、リテラチャー・サークルで英語で議論する活動を通して、相手と意見を伝え合うためのスキルを習得することができました。英語を使う技能だけでなく、将来に直結する力が身に付いたことが良かったです。

○ 確実に英語での会話力が上がりました。始めは使える単語も少なく、なんとなく日本語も混ざって話していたけれど、教科書の物語を授業で学んで、リテラチャー・サークルで友達と意見をつなげられたので、とても身に付きました。また、リテラチャーで覚えて話すだけでなく、その場で考えて話すディスカッションの場面があったので、より身に付きが実感できました

○ 当日、アドリブで意見を伝え、友達の考えに関連させたり反対したりする中で、文法の正確さも大切だが、伝えたい気持ちの大切さに気づけた。また、もっとうまく伝えたいという気持ちで復習し、より正確な文法を覚えることにもつながった

○ 初めてリテラチャー・サークルを行った時は、全く英語が話せなかったが、2年間のリテラチャー・サークルを通して、話せる英語の量も増え、友達との会話を楽しめるようになった。アンネの日記やFly Away Homeからは自分の意見を積極的に友達に伝えることができなかったが、自分の発言に少し自信を持つことができた

○ 聞く力と話す力はもちろん、日常で使えるような言い回しや、相手の意見についての反応などは特に身に付いた

○ リテラチャー・サークルで自分の意見を相手に伝えるという点が良かった。そのこと
により、本当は道徳でする内容などを自分が知っている英単語や文法を使って相手に伝えることでより自分の気持ちを相手に伝えたいという気持ちが高まり同時に英語に対する意欲も高まったと思う。

生徒とともに成長できる

リテラチャー・サークルを行っていて、私はまだまだ生徒から気づかされることが多いです。教師も生徒と共に成長していける言語活動だと思います。リテラチャー・サークルを行うことで、生徒も教師も英語の授業に楽しく取り組んでいければいいなと思います。